この記事では、0歳の雌鹿を自然由来の自分が採取できるもので黒化処理まで行った試作の記録をまとめます。今回の目的は、
- 黒化の条件の確認
- 浸漬期間や乾燥の影響の把握
- 来年以降の安定生産に向けた基礎データ収集
の3点です。工程の難しかった部分、再現性の課題について自分なりに整理しました。記録をしておかないと忘れてしまうので、備忘録の意味を込めて。
原皮の特徴と取り扱い
今回扱ったのは0歳の雌鹿の原皮です。狩猟期にとったもので、友人と一緒に行ってとったものです。お肉は癖がなく、鹿感がない・・・なんて贅沢なことをいった覚えがあります。皮としてこの年齢の個体は、繊維が細かく、極端に厚みのばらつきがないんですが、やっぱり銀面はちょっと脆い気がする。
なので素材に合わせた調整が必要となると思います。ほんとに個体差ってあります。
鞣し工程で特に難しかった「浸漬期間」
今回もっとも慎重に判断したのが、植物タンニンの浸漬期間です。
植物タンニンの濃度や反応は、
- 気温
- 水温
- 皮の厚み
- 皮の繊維の締まり具合
によって大きく変化します。
同じ濃度でも時期や湿度によって沈み方が違うため、決まった時間をそのまま適用することができません。浸漬が短ければ締まりが弱く、長ければ過収斂で硬化します。今回の0歳個体は繊細だったため、毎日触って繊維の張りと都度しみ込みを確認しながら調整しました。だいたいの目安はつかめてきた感じはしますが、浸漬期間の正確な基準を作るには季節ごとのデータ蓄積が必要と感じています。
そのため、鞣しのデータ化はすべての革で行っています。
黒化について:条件が揃わないと安定(発色?)しない
黒化は、タンニン剤に森で獲れた植物を加えて反応させています。
ただし、この黒化は非常に条件に左右されやすく、3枚つけて実験したのですが、3枚とも微妙に違いが出てしまいました。
- 素材自体の反応性
- 液の状態(濃度・温度・PHなど)
- 原皮の繊維密度
- 浸漬期間
- 乾燥具合
同じ工程を行ってもなかなか狙った色にならない。黒化の仕組み自体は理解していますが、反応にばらつきがあり、完全な再現性にはまだ課題があると感じました。一番の要因は、たぶん浸漬期間と加脂かな。記録を増やしながら調整していく必要があります。
乾燥の管理と加脂のタイミング
植物タンニン鞣しは乾燥スピードによって仕上がりが変わります。乾燥と同時にタンニン(浮遊?)が表面に移動することが主な原因だと、書籍には書いていました。
- 乾燥が早すぎる → 波打ち・縮み、硬化
- 遅すぎる → 表面が緩くなる
今回の革は繊細だったため、乾燥後半で特に縮みが表れやすく、作業環境の調整が必要でした。
加脂には鹿脂を使用しました。鹿脂は繊維への馴染みがよく自然な艶と柔軟性が出ます。
↓鹿脂の抽出はこちら

ただし、加脂の吸い込みが始まるタイミングは素材ごとに異なり、数時間の差で仕上がりに大きな影響が出るため、ここも再現が難しい工程です。
はっきりと言えるのは、手をかけたぶん、こまめに見た分だけ良いものができるということ。難しいね。

今回の結果と、再現性の課題
今回の革は、黒化と柔軟性のバランスが良く、仕上がりとしてはこんな感じでした。柔らかすぎても小物を作る時芯材いれなければならなくなるので、ハリを重視して柔軟・乾燥させました。


これ塗料で染めてなくて鞣しで黒くなってるんですよ。いや、すごいよ!
しかし、浸漬期間、黒化の条件、乾燥スピード、加脂の吸い込み、といずれも季節や素材の状態に強く左右され、再現性が高いとは言えません。作りたい革を作るのが目標ですので、本当に奥深い世界です。そしてこの革、乾燥途中だったの気づかないで丸めて保管してしまって、しわができてしまった・・・なのでこの画像はその前のもの。
今後の課題としては、
- 浸漬期間の目安
繊維の締まり具合や色の変化を覚える。 - 黒化条件の整理
素材の反応の振れ幅を再確認する。 - 乾燥環境の見直し
湿度・風量・日数の管理方法を整理。 - 加脂タイミングのデータ化
水分量と吸い込み開始の関係を観察して記録すること。
これらを蓄積することで、年間で安定した黒革を作るための基礎となるでしょう!
今回の0歳雌鹿の黒革は、複数の条件が揃ってまぁまぁの仕上がりになりましたが、再現を保証できる段階にはありません。
反省点もあるし。
自然素材の鞣しは変動が大きいため、今後も季節ごとの素材の反応を記録しながら、浸漬・黒化・乾燥・加脂の工程を見直していきます。来年以降、年間を通して安定した仕上がりを目指して、引き続き検証を続ける予定。以上



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