野生動物を解体すると、肉とは別に「脂(あぶら)」が得られます。
鹿や熊など、冬に向けて脂をためる動物では、その量も質も豊かです。私は革鞣しをよくするので、皮に付いた脂をよく使います。料理や革の加脂、道具の保護など、さまざまに活かすことができます。
ここでは、鹿や熊を例に、家庭でもできる脂の抽出と精製の方法を紹介します。誰かに教わったわけではなく、いち素人がやっていますので色々と改善点あるかと思います。
ただ特別な器具は必要ないので、鹿とか熊とか取ったら是非脂の抽出を。
鹿と熊、それぞれの脂の特徴
鹿の脂
冬の個体ほど脂が厚く、背中や腰、内臓まわりにたっぷりと付きます。
融点が高く、白く締まった脂は扱いやすく、革の加脂や石鹸にも向きます。
夏の個体は脂が薄く、油分も柔らかめ。抽出量は減りますが、香りが穏やかです。
これは秋の雄鹿の首周りの脂。でっかい。

私は基本的に夏鹿の脂は取りません。冬に入る前の秋鹿の脂をよくつかっています。
熊の脂
秋に最も豊かになります。皮下脂肪が厚く、背脂の量は鹿を上回ります。
熊脂は溶かすと独特の香りがありますが、精製を丁寧に行えば透明で滑らかな油になります。
昔から軟膏や灯火用としても使われてきました。お肉についた脂はそのまま、食べます。これがとっても美味しいんだな。
なので、熊の脂は皮に付いたやつを精製してますね。
脂の採取と保存
筋や肉片が残ると焦げや臭いの原因になるため、できるだけ脂だけを切り取ります。できるだけで良いですが、肉が残ると煮ている時何とも言えない匂いになりますし、脂の色がちょっとわるくなるかと思います。
正直あまり神経質にならずとも、できるだけで良いと思います。
採取した脂は、時間が経つと酸化して匂いが出るため、すぐに次の工程に移った方が良いですができなければ冷蔵または冷凍で保存します。
抽出前の下ごしらえ
- 血や肉片を除く。
脂を清潔に保つことで、透明度と香りが良くなります。 - 小さく刻む。
ミンチ状にすると溶けやすく、抽出効率が上がります。表面積が広がるためです。
このひと手間とっても大事。特に小さく刻むと沢山脂が出ますし、時間の短縮にもなります。
湯煎で抽出する ― ゆっくりと油を引き出す
焦げを防ぐためには、湯煎法がもっとも確実です。
直火に比べて時間はかかりますが、香りがやわらかく、酸化の少ない油が得られます。
1 鍋に脂を入れ、湯煎または弱火でじっくり加熱します。
2 少しずつ脂が溶け出し、透明な油が浮いてきます。

3 冷ますと上層に脂、下層に水分や沈殿物が分かれます。冷蔵庫に入れても良いですし、寒い時期なら外に置いておけば良いです。分かれたら、上の層を割って集めます。


4 再度温めて、布や金属フィルターでこします。温めないと粘度が低く濾せません。
※コーヒーフィルタとかでも良いですし、お古のTシャツとかでも大丈夫です。
↓こしたらこんな感じに。これは藍染めの時に使った鍋を使ったので、ちょっと青っぽくなってしまいました。

精製(脱臭・安定化)
抽出した脂をそのまま使うと、動物特有の匂いや不純物が残ります。
これを取り除くのが「精製」の工程です。
- 抽出した脂を鍋に戻し、同量の水を加えて弱火で20〜30分ほど煮ます。
- 火を止めて冷ますと、上に脂、下に水と沈殿が分かれます。
- 固まった脂だけを取り出し、不要な沈殿を除きます。
これを2〜3回繰り返すと、透明度が上がり、長期保存にも耐える油になります。
ちなみにやらなくてもちゃんと油はできます。私は最初のころやってませんでした。
アロマウォーターを使った乳化
私の場合は、庭に咲くタイムなどのハーブを蒸留したときに出るアロマウォーターを使っています。
この蒸留水を脂と合わせて撹拌すると、自然な香りとともに軽く乳化します。攪拌と言うか瓶に入れてシャッフルしますね。
米油や鹿脂をブレンドする際にも、この水を少量加えることでなじみが良くなります。
←左がシャッフル(攪拌)前 右がシャッフル(攪拌)後→

乳化って空気は入って白っぽくなります。まぁべつにアロマウォーターじゃなくても普通に水でも大丈夫です。
ただし、化粧品や販売品に使う場合は法規制が関わるため注意してください。
本記事で紹介している方法は、あくまで個人が行う自家消費の範囲内で行うものとしてください。
保存方法
・ガラス瓶や金属容器に入れて、光の当たらない場所で保管。私は飲んでるサプリの遮光瓶にいれています。使うときにだけ開けると酸化臭を防げます。
・冷蔵で数ヶ月、冷凍なら1年以上もちます。それ以上はやったことないのでわかりません。
・再利用時に湯煎でゆっくり溶かせば品質を保ちやすいです。
↓1歳の雄鹿の皮についていた脂を精製・乳化するとこれくらいになります。

抽出後に出る「脂かす」は香ばしく、昔は獣脂煎餅や餌にも使われていました。我が家ではニワトリにあげたり、箱罠の餌につかったりしてます。できるだけを無駄にせずやっていきましょう。
活用例
- 鹿革や熊革の加脂剤として
- 木製品や金属道具の防錆・保護油
- ロウソクや軟膏のベース
- 調理用(熊脂を炒め油として使うと独特のコクが出る)
自家製の油は香りや質が季節ごとに変わります。
冬の鹿脂は固く白く、熊脂は粘度があり、温度で表情を変えます。自然の変化がそのまま油に表れるのが、この手仕事の面白さです。
注意事項
本記事の内容は、あくまで個人の自家消費を前提としています。
脂を用いた化粧品や販売品の製造・販売には薬機法などの法的規制があるため、十分ご注意ください。



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