2024年、昨年に引き続きヒグマの皮鞣しをおこないましたので、その話を記事にしたいと思います。この個体は私が捕獲したわけではなく、所属する猟友会のパイセンが捕獲したもので、鞣しの話が私に流れてきたものです。この記事には、動物の生の革や、見る方にとってはショッキングな画像が含まれているので、自己責任でご覧ください。
個体情報
捕獲地は十勝。捕獲時期は6月の暑い日です。雄ヒグマ約150㎏程の個体で、絶命までに3発銃弾が撃ち込まれたそうです。農家の畑を荒らしていたところ捕獲された模様。毛並みも素晴らしく、黒々として胸元は金毛が生え見事でした。毛皮にするかかなり迷いましたが、昨年熊の毛皮はチャレンジしたのでレザーにすることにします
捕獲後すぐに皮を剥ぎ、冷凍保存します。この頃は絶賛鞣し小屋作成していたので、すぐにでも鞣したかったのですが・・・やむなく保存していたものです。鞣し小屋作成の記事は以下参考ください。

解凍
解凍したのは8月下旬。他に保存していた2歳程の雄鹿の皮と一緒に解凍しました。大体2か月程冷凍保存していましたが、業務用の冷凍庫のようにハイパワーの物ではありません。冷凍期間は短ければ短いほど良いと思います。が、私の経験的には一般の猟師(?)が持つ冷凍庫なら半年くらい冷凍保存していてもレザーにするには問題ないかと思っています。1年以上もいけるかと思っていますが、そこまで保存したことないので、確かなことは言えません。
大体猟期に捕獲し、春から順次鞣していくのが私の流れになっています。

解凍は水につけて緩やかにやっているつもりですが、中の部分は解凍は遅いです。大体1日つけておけば解凍されます。
裏打ち&高圧洗浄
解凍ができたら高圧洗浄で肉や脂をこそげ落としていきます。が、ここで鹿との違いを実感します。大体鹿は30分くらいで高圧洗浄は終わるのですが、今回の熊は3時間以上かかりました。高圧洗浄後の裏打ちもかなり手ごたえが違い、皮の厚みや弾力感が熊特有かなと思います。
鞣し小屋内にブルーシートで養生した区画を作り、肉片などは飛び散らないようにしています。
高圧洗浄のやり方としては、一度直線状に削いでから、真下にそぎ落としていく形が飛び散らない方法かと思います。こんな感じ↓

脂すごいですよね。この白いの大体全部脂なんですよ。上の真ん中部分が直線状にそぎ落とした部分。で、真下に落としていく。

こんな感じやっていくと、脂やら肉片やらが一緒にくっついてシート状にぶら下がっていきます。これでかなりの飛散防止になっています。である程度たまったらナイフで切ってバケツへ貯めていきます。
で終わったら次は、脱毛の工程に入ります。
脱毛・脱灰・酵解・浸酸&たくさん裏打ち
脱毛等の工程で写真を撮るのを忘れてしまったのですが、あまり見ても面白くないので文字だけで。以前書いた鹿皮の記事と同じ工程ですので、そちらを参考にしてください。

裏打ちした写真だけはありました。多分酵解した後の裏打ちだったと思いますが、綺麗になってますね。これで次の工程へGO

タンニン漬け
今回は、地元の植物を使ってタンニン鞣しをします。何を使ったかは誰も興味ないと思うので記載しませんが、私の家の周りに大量にあるものを使いました。ここで失敗だったのが、タンニン剤を煮だした時の1番液のみを使用したことです。以前藍染めで植物染を勉強した時に、2番液、3番液まで使っていたのでそれを流用してタンニン量を稼げばよかったです。
最初は赤黒くて、良い色になりそうだな~なんて思っていましたが、これは芯まで浸透しないな・・・と気づき違うタンニン剤を使用。

で、液のタンニン濃度と色の濃さは関係ないと外国のホームタンナーさんが言っていましたが、その理由を実感することができました。タンニン液は、日光で酸化して変色するんですよ。
皮を入れて日に当てず、密封していたタンニン液は色が薄くなるんですが、外に置いておくと色は濃くなる。タンニン液を補充する時に、少量取り出して保管しておいて比較実験しよ~っと。としていたのが↓の画像。

一番左が、取り出した直後のタンニン液。で右3つが順次1~2週間ほどして取り出していったはずのタンニン液。右3つとも色ほとんど同じに見えますよね。最初は一番左みたいな色してたのに、気づいたら色変わってました。比較実験にならないことがわかりました。
いや~こんなこと本職の方からしたら当たり前なんでしょうが、実践して初めて理解できるんですね。それだけ。あまりにニッチな話だったので申し訳ないのですが、私はかなり衝撃を受けましたよ!!
渋吐き・乾燥&加脂
タンニン漬けにして約2か月。8月下旬に解凍して、9月上旬にタンニン漬けして2か月経過なのでもう11月。北海道は11月になると氷点下になる日もあります。今回はギリギリならなかったですがほぼ0度近かったので全く乾燥しません。
乾燥は温度、湿度、風量で決まると思っているので、超微風の扇風機を揺らぎでつけて乾燥させました。大体1週間くらい乾燥していたと思います。
デカすぎて、1800mm×900mmのコンパネに収まりきらず、毛皮鞣しの時に使用している木枠を流用して乾燥させました。

完成!!
まぁ、途中でいろいろ様子見たり、かなり手間かかりました。穴あきありますが、かなりでかいので何でも作れると思います。

近くでみるとド迫力のテクスチャ。

で、さっそくお世話になっているパイセンへ小銭入れ作成。

右下だけが鹿皮で、あとはこの熊革で作りました。とりあえず、もったいないのであとの革はストックしときます。毎年熊革鞣して、もっと良い革作れるように、良いものクラフトできるように頑張ります。以上。
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